電源オフでもパソコンの時計が合うのはなぜ? パソコンミステリー講座 16

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はじめに

1週間の旅行から帰ってきた日のこと。ホコリよけにコンセントまで抜いておいたパソコンを起動すると、画面の右下の時計は今日の日付と時刻をぴったり指していました。電気は完全に絶っていたはずなのに、いったい誰が合わせたのでしょう。そんな小さな不思議、感じたことはありませんか?

こんにちは、ヒロです。ソフトウェア開発の現場に40年以上いた元エンジニアが、この謎を仕組みから種明かしします。あわせて「最近時計がずれる」「起動するたびに日付が戻る」というお悩みの切り分け方まで、順番にご案内しますね。

先に結論を少しだけ。実は電源を切っても、パソコンの中には眠らずに働き続ける小さな時計係がいるんです。しかも調べていくと、係は1人ではありませんでした。

※本記事はWindowsパソコンを前提にしています。

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記事の内容について
本記事は、筆者(ヒロ)の実体験や調査をベースに構成しています。ただし、読者の皆様に分かりやすく解説するため、また筆者や関係者のプライバシーを保護するため、登場人物・時期・環境・金額などの細部を一部変更したり、一般的な事例やフィクションを織り交ぜたりしている場合があります。すべての記述が筆者の個人的な事実そのままとは限りません。

また、記事内に登場する人物(テル・タケシなど)は、内容を分かりやすくお伝えするための架空のキャラクターであり、実在の人物との会話を記録したものではありません。

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目次

1. 消えない時計の謎 コンセントを抜いても狂わない

1. 消えない時計の謎 コンセントを抜いても狂わない

この謎を私のところへ持ち込んだのは、ご近所のテルさんでした。旅行帰りの興奮も冷めやらぬ様子で、開口一番こう言うのです。

旅行中ずっと電源を切ってたのに、時計がぴったり合ってるの。ちょっと不気味じゃない?

起動した瞬間にネットで合わせてるだけっしょ。ネットがなきゃ狂うに決まってるよ

横で聞いていた甥のタケシが、即答しました。なるほど、いかにも現代っ子らしい推理です。実はこの「起動時にネットで合わせている説」、大人の方に聞いてもいちばん多く返ってくる答えなんですよ。

ですが元エンジニアとしては、この説には引っかかる点があります。もし本当に「ネットで合わせているだけ」なら、ネットにつながっていないパソコンの時計は狂うはずですよね。

ところが現実には、インターネットに一度もつながずに使われているパソコンでも、時計はおおむね合っています。工場の設備や、あえてネットから切り離して使う事務用のパソコン。私は仕事柄そういう機械を山ほど見てきましたが、電源を入れれば時計はちゃんと今日を指していました。

つまり消去法で、こう推理できます。電源とは別に、時計を動かし続けている「何か」がパソコンの中にある。これが第一の手がかりです。

2. 第二の手がかり パソコンの中に「小さな腕時計」が隠れていた

2.1 電源を切っても眠らない「中の時計係」

種明かしの前半です。パソコンの内部の大きな基板(マザーボード)には、時計専用の小さな部品が載っています。そしてその隣には、500円玉より少し小さい銀色のボタン電池(CR2032という型が一般的です)がはめ込まれています。

この時計部品は、パソコン本体の電源とは別の電源で動いているのがポイントですね。本体の電源を切っても、コンセントを抜いても、ボタン電池から電気をもらって時を刻み続けているんです。

腕時計を思い浮かべてください。あなたが眠っている間も、枕元の腕時計は自分の電池で動き続けていますよね。だから朝起きた瞬間に「今何時か」が分かる。パソコンも同じで、本体が眠っている間も腕時計だけは起きている。起動した瞬間、パソコンはまずこの「中の時計係」に時刻を尋ねるというわけです。

「そんな小さな電池で何年も動くの?」と思われるかもしれません。この時計係は驚くほどの省エネ設計で、消費する電気は本当にごくわずか。だからあの小さな電池ひとつで、長い年月を働き続けられるんですよ。

もう少し詳しく知りたい方へ(専門用語での補足)

この「中の時計係」の正式名称はRTC(リアルタイムクロック)といいます。マザーボード上の専用回路で、ボタン電池(通称CMOS電池)を電源として、パソコン本体の電源状態と無関係に時を刻み続けます。RTCは時刻のほかに、起動に必要な基本設定(BIOS/UEFI設定)の保持にも同じ電池が使われているため、電池が切れると時刻のリセットと同時に設定が初期化されることがあります。

2.2 電池が切れると何が起きるのか

では、この電池が切れたらどうなるか。答えは単純で、腕時計が止まるのと同じことが起きます。電源を切っている間、時計係は時を刻めなくなり、次に起動したとき日付が過去に戻ってしまうんです。

私が現場にいた頃、古いパソコンを起動したら日付が何年も昔に戻っていた、という場面には何度も出くわしました。画面に映る過去の日付を見て、一瞬タイムスリップしたような妙な気分になるんですよ。正体を知ってしまえば、なんてことはない。中の時計係の電池切れです。

電池の寿命は、一般に数年から10年程度が目安とされています。ただし機種や使用環境による差がとても大きいので、あくまで目安として捉えてくださいね。

じゃあ、日付が戻るようになったら故障ってこと? 買い替えなきゃダメかしら…

故障ではなく電池切れのサインであるケースが多いんですよ。腕時計の電池が切れても腕時計を捨てないのと同じです

ここは大事なところなので繰り返します。時計の日付が戻る症状は、パソコンの寿命ではなく消耗品からのお知らせである可能性が高いんです。時計は数百円の電池に支えられている。これは手抜きではなく、実に合理的な設計なんですよ。

3. だが電池だけでは説明がつかない 時計は少しずつずれていく

3. だが電池だけでは説明がつかない 時計は少しずつずれていく

さて、これで一件落着。と言いたいところですが、この推理にはまだ穴があります。ミステリーで言えば、アリバイがひとつ崩れていないんです。

実は「中の時計係」は、完璧な時計ではありません。この係は水晶のかけらが規則正しく震える性質を利用して時を刻んでいるのですが(クオーツ腕時計と同じ原理です)、温度などの影響を受けて、1日に数秒ほどずれることがあるんです。

1日数秒。たいしたことがないように聞こえますよね。でも計算してみてください。仮に1日2秒ずつずれたら、1年で約12分。数年放っておけば、待ち合わせに堂々と遅刻する時計のできあがりです。

ところが、私たちのパソコンの時計は何年使っても「ぴったり」を保っています。あなたのパソコンの時計が12分ずれていたこと、ありますか? おそらくないはずです。

中の時計係だけでは、この正確さは説明がつかない。つまり、誰かがこっそりズレを直している。ここで推理は最終章に入ります。

4. 真相 時計係は2人いた

4. 真相 時計係は2人いた

4.1 外の時計係「インターネット時刻合わせ」

真相をお話しします。あなたのWindowsパソコンは、ネットにつながっているとき、定期的にインターネット上の「時刻の親分」に時間を確認しに行っています。Windowsの場合、標準ではマイクロソフトが運用する時刻サーバー(time.windows.com)が相手です。

「今、正確には何時ですか?」「はい、何時何分何秒ですよ」。この問い合わせが裏で自動的に行われていて、中の時計係にたまったズレを、そのたびにそっと直してくれているんです。これが2人目、外の時計係の正体ですね。

整理しましょう。中の時計係(ボタン電池)は、電源が切れている間も時を刻み続ける係。外の時計係(インターネット時刻合わせ)は、少しずつたまるズレを定期的に補正する係。この2人の連係プレーが、「電源を切っていたのに時計がぴったり」という不思議の答えだったわけです。

マジっすか。じゃあ俺の「ネットで合わせてる説」、半分は当たってたじゃないっすか

半分はね。ただ「ネット合わせだけ」だと思ったのが惜しかった。電池で守り、ネットで直す。2人がかりだったんだよ

実はこの「二段構え」、時計の世界では王道の考え方なんです。壁掛けの電波時計も、中身は普通のクオーツ時計が動いていて、電波で定期的にズレを直しています。時計は必ず少しずつずれるもの。だから内蔵の時計で時を保ち、外の正確な時計で補正する。40年この業界にいた身として言わせてもらうと、こういう「多層の守り」こそ、良い設計の見本のようなものなんですよ。

4.2 第三の手がかり 時計が狂うと「安全への扉」も閉まる

ここで、おまけの手がかりをひとつ。パソコンの時計が大きく狂うと、インターネットで「このサイトに安全に接続できません」といった、一見時計と無関係なエラーが出ることがあります。

仕組みとしてはこうです。安全なサイトは「安全ですよ」という証明書を持っていて、その証明書には有効期限(日付)があります。パソコンの時計が何年も狂っていると、正しい証明書まで「期限切れだ」と誤解してしまい、扉を閉めてしまうんですね。

時計の正確さは、単なる「時間を知る」ためだけでなく、通信の安全の土台にもなっている。時計係たちが黙々と働いてくれているおかげで、私たちは安心して買い物もネットバンキングもできているというわけです。

5. わが家の時計係を点検する 時計が狂うときの切り分け手順

5. わが家の時計係を点検する 時計が狂うときの切り分け手順

謎が解けたところで、ここからは実践編です。「うちのパソコン、最近時計がずれるのよね」という方のために、原因を順番に切り分ける手順をまとめました。エンジニア流に言えば、疑わしい層をひとつずつ潰していく方法ですね。上から順にお試しください。

5.1 手順① 時刻同期の設定を確認する

まずは「外の時計係」がちゃんと雇われているかの確認です。スタートボタンから「設定」を開いてください。

STEP
「設定」を開く

スタートボタンを押し、歯車マークの「設定」を選びます。

STEP
「時刻と言語」→「日付と時刻」を開く

設定画面の中から「時刻と言語」を選び、「日付と時刻」を開きます。

STEP
「時刻を自動的に設定する」がオンか確認

このスイッチがオフだと、外の時計係はお休み中です。オンに切り替えましょう。

5.2 手順② 「今すぐ同期」を試す

同じ「日付と時刻」の画面に、「今すぐ同期」というボタンがあります。これは外の時計係を手動で呼び出すボタンです。押してみて時計が正しく直れば、原因は同期まわりだったと考えられます。

長いあいだネットにつないでいなかったパソコンは、外の係に会えずズレがたまっていただけ、ということもよくあります。その場合もこのボタンひとつで解消するケースが多いですよ。

5.3 手順③ タイムゾーンを確認する

時計のずれ方が中途半端ではなく、きっちり数時間単位(たとえばちょうど9時間)でずれている場合。これは時計係のせいではなく、「どこの国の時間で表示するか」の設定(タイムゾーン)が原因の可能性があります。

同じ画面の「タイムゾーン」が「(UTC+09:00) 大阪、札幌、東京」になっているか確認してください。海外製ソフトの導入や何かの拍子に、ここが外国の時間に変わってしまうことがあるんです。

5.4 手順④ それでも狂うなら「中の時計係」の電池切れを疑う

手順①〜③を確認してもなお時計が狂う。特に電源を切って起動するたびに日付が過去に戻る。この症状が出ていたら、中の時計係の電池切れが濃厚です。第2章でお話しした、あのボタン電池ですね。

ここまでの切り分けを、層の順番でまとめておきます。

  • ①同期設定:「時刻を自動的に設定する」がオンか
  • ②今すぐ同期:ボタンを押して直るか
  • ③タイムゾーン:数時間単位のズレなら地域設定を疑う
  • ④ボタン電池:起動のたびに日付が戻るなら電池切れのサイン

上から順番に見ていけばいいのね。それなら私にもできそうだわ

そうです。いきなり分解や修理を考えなくていい。軽い原因から順に潰すのがトラブル解決のコツですよ

6. 対策の選び方 電池交換か、修理か、買い替えか

6. 対策の選び方 電池交換か、修理か、買い替えか

切り分けの結果「電池切れらしい」となったとき、取れる道は3つあります。ご自身の状況とパソコンの種類に合わせて選んでください。

6.1 デスクトップの場合 電池交換に挑戦する道もある

デスクトップパソコンの多くは、ケースを開けるとマザーボード上にボタン電池(CR2032)が見える構造になっています。電池自体はコンビニや家電量販店で数百円。選ぶときは、信頼できるメーカー品にしておくと安心です。

挑戦する場合は、必ず電源を切ってコンセントを抜き、静電気に注意して作業してください。精密ドライバーがあると作業しやすい機種もあります。冬場にセーターでバチッとやる、あの静電気は電子部品の大敵なんですよ。

ただし正直にお伝えします。電池の位置や外しやすさは機種によって差が大きく、また本体の分解はメーカー保証に影響する可能性があります。「必ず直る」とも言い切れません。少しでも不安があれば、無理をせず次の選択肢へ進んでください。

6.2 ノートパソコンの場合 無理は禁物

ノートパソコンは、電池の場所が機種ごとにバラバラで、裏ぶたを開けること自体の難度が高い設計が多いんです。基板の奥に隠れていることも珍しくありません。

ですからノートの場合、私は基本的にメーカーや修理店への相談をおすすめしています。40年パソコンの中身を見てきた私でも、初めての機種のノートを開けるときは事前に分解情報を調べてからにするくらいですから、無理をする場面ではありません。

また、購入から年数がたっているパソコンなら、修理費用と買い替えの費用を比べて考えるのもひとつの道です。時計の電池だけが理由なら慌てて買い替える必要はありませんが、他にも不調が重なっているなら、良い区切りかもしれませんね。

6.3 症状別・判断の目安まとめ

スクロールできます
症状考えられる原因おすすめの行動
時計が数分〜数十分ずれる時刻同期がオフ・長期間ネット未接続「時刻を自動的に設定する」をオンにして「今すぐ同期」
きっちり数時間単位でずれるタイムゾーン設定の誤り「(UTC+09:00) 大阪、札幌、東京」に修正
起動のたびに日付が過去に戻るボタン電池の消耗の可能性デスクトップは電池交換を検討。ノートは修理相談
時計以外にも不調が多い本体側の問題の可能性修理相談または買い替えの比較検討

7. よくある質問(FAQ)

7. よくある質問(FAQ)
パソコンの時計は、電源を切っている間は何で動いているのですか?

マザーボード上の時計専用部品(RTC)が、本体とは別のボタン電池(CR2032が一般的)で動き続けています。消費電力がごくわずかなので、小さな電池でも長期間働けるんです。

ボタン電池が切れたまま使い続けても大丈夫ですか?

すぐに壊れるわけではありませんが、起動のたびに日付がリセットされたり、サイトへの接続エラーやファイルの日付の混乱が起きたりと、地味な不便が続きます。気づいた時点で対処しておくのがおすすめですよ。

時刻同期を手動でやり直す方法は?

「設定」→「時刻と言語」→「日付と時刻」の画面にある「今すぐ同期」ボタンを押してください。ネットにつながっていれば、その場で時刻サーバーに確認して補正してくれます。

時計がちょうど9時間ずれるのはなぜですか?

タイムゾーン(地域の時間設定)が外国になっている典型的なサインです。日本とイギリスの時差がちょうど9時間のため、「(UTC+09:00) 大阪、札幌、東京」以外の設定になっていないか確認してみてください。

「このサイトに安全に接続できません」というエラーと時計は関係ありますか?

関係する場合があります。サイトの安全を示す証明書は日付で有効期限を管理しているため、パソコンの時計が大きく狂っていると、正しいサイトまで期限切れと誤判定されることがあるんです。多くのサイトで一斉にこのエラーが出たら、まず時計を確認してみてください。

ノートパソコンのボタン電池は自分で交換できますか?

機種によっては可能ですが、分解の難度が高く、電池の位置も機種依存です。分解はメーカー保証に影響する可能性もあるため、基本はメーカーや修理店への相談をおすすめします。

8. まとめ 時計は「多層の守り」で合っている

8. まとめ 時計は「多層の守り」で合っている
おわりに

電源を切っていたのに時計が合っている謎。その答えは、ボタン電池で時を刻み続ける「中の時計係」と、ズレを定期的に直す「外の時計係」(インターネット時刻合わせ)の二段構えでした。時計は必ず少しずつずれるもの。だからこそ多層で守る、という先人の知恵が詰まった設計です。

もし時計が狂い始めても、慌てなくて大丈夫。同期設定、タイムゾーン、電池、本体の順に切り分ければ、原因はきっと見つかります。この機会にぜひ一度、設定の「時刻と言語」を開いて、わが家の時計係たちの働きぶりを点検してあげてくださいね。

さて、次回のパソコンミステリー講座。

夜中にふと目が覚めたら、消したはずのパソコンが光っていた——そんな経験はありませんか。実はパソコンが自分で目覚ましをかけて、あなたの寝ている間に仕事を片づけていたのです。

第17話「夜にパソコンが勝手に動き出すのはなぜ? パソコンミステリー講座 17
もう公開していますので、続けてどうぞ。

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